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ボリュームの大きいレコードを作るために

制作したレコードが「市販のレコード」や「リファレンスとする作品」と比べて、ボリュームが小さくてなんだかショボく感じてしまった…とならないようにするには、「レコードの仕組み」と「レコードのためにマスタリング」する事が重要です。勿論、再生機器のボリュームを上げれば良い話でもありますが、S/N比も考慮しつつ、地味に聴こえないように、可能な限り許容範囲の中で、大きなボリュームで収録されるのが理想的です。本ブログではボリュームが大きいレコードを作るためにどのようにオーディオデータを仕上げるべきかと、基本的なレコードの仕組みについてご紹介します。
①レコードのサイズと回転数、収録時間
レコードはフォーマットや回転数によって片面に収録出来る時間が限られています。レコードの溝幅は低音やボリュームが増えるほど広くなり、溝幅が広くなるほど片面に収録出来る時間は短くなっていきます。よって、オーディオデータの時間が以下の推奨収録時間より短ければ短いほど、ボリュームの大きく収録しやすく、推奨収録時間を超えれば超えるほど、ボリュームを小さく収録せざるを得なくなります。
※プレス工場が公表している、一般的なレコードのボリュームで収録するための収録時間の上限。
②レコード用にマスタリングする
レコードには配信やCDと違い、好きなだけ好きな成分を入れられるわけではなく、レコードの特性由来の制約に合わせて調整する必要があり、レコード用にマスタリングやミキシングを行わなければ「ボリュームの大きいレコードを作る」ことは出来ません。
配信用マスター:ブリックウォールリミッターで圧縮された音源からカッティングする場合、レコードにとって過度な低域や高域の成分が含まれている可能性が高く、加えてダイナミックレンジに欠けるので、カッティング時にボリュームを稼ぎにくくなります。このような音源からカッティングする場合、元のバランスから変えざるを得なくなる(妥協的なEQ)ほか、立体感に欠け、ボリュームも小さく感じやすい仕上がりになりがちです。
レコード用マスター:ピークは適切に抑えつつも、ダイナミックレンジは確保されています。これに加えて、「レコードプレスに適したマスターについて」で説明される「逆位相」や「鋭い高域」の部分が適切にコントロールされている状態が理想的ではありますが、以下の波形のように過度に圧縮されていない状態からでしたら、カッティングエンジニアが調整出来る範囲が広がり、ボリューム感を適切に、立体感に優れる、音楽的に優れた仕上がりを目指しやすいでしょう。
③カッティング方法の違い
・国内カッティング(ラッカーカッティング)
WOLFPACK MASTERCUT STUDIOSでラッカー盤からカッティングします。仕上がりの方向性についてコミュニケーションが取れるので、目標のボリュームを達成するためにどうすれば良いか、問題は無いか、話し合いながら理想的なレコード作りを実現できます。ラッカーは収録出来るボリュームの上限がDMMカッティングと比べて高いという特性も踏まえて、ラウドな仕上がりが求められるジャンルではラッカーからのカッティングをオススメしています。
・海外カッティング(DMMカッティング)
DMMとは標準的なラッカー盤から作成する方法の最初の2工程を省いた、銅板のマザー・マスター盤に直接溝を刻みこむ方法(詳しくはコチラ)です。こちらのプランはフラットカット(名前の通りオーディオデータをフラットにカットする方法)とラウドカット(入稿データが歪む手前まで可能な限りボリュームを稼ぐ方法)の2つからお選び頂けます。WOLFPACKではアンビエントやフォークなど一部のジャンルを除き、S/N比を考慮して基本的にラウドカットを採用しておりますが、レコード用に適切にマスタリングされていなかったり、収録時間が長い場合は、ラウドカットでもボリュームの向上はあまり見込めません。
以下、WAX ALCHEMY STUDIOのエンジニア諏訪内さんとの解説になります。ぜひ参考にしてみてください!
Ichitaro Ohara
ウルフパックジャパン・マネージャー。1980年生まれ。レコードにまつわる業務に長く関わってきた経験をもって、スムースなサービスができるよう心がけます。
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